今まさに恋におちようとしている二人

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一週間後、この前、雨の日に言い交した時刻に例のカフェに入ってみると、外からは見えない奥の席に彼女は待っていて、私を認めて嬉しそうに手をふってみせました。
「やあ」「また会っちゃった」何かイタズラをした子供のような彼女の口調でした。
あのとき10分あまり言葉を交わしただけなのに、他人からみたらいまの二人はずいぶん親しそうに映ったことでしょう。
「今じぶん呼び出して、ご迷惑じゃなかったですか」「仕事の関係上、午前はあいています」交代制のIT関係の会社に私は勤めていましたが、彼女は別にそこまでたずねようとはしませんでした。

私もまた彼女のプライベートにはふみこまないつもりでいます。今、二人がここで会っている。

それだけで私も、おそらくは彼女も満足だったのです。

二人は既婚者同士でしたが、ここにいるのは今まさに恋に落ちようとしている男と女でした。

「もしよ、もしあたしが、二人だけでどこかに行きたいと言ったら、あなたはどうしますか」

ずいぶん遠回しな言い方をする彼女でしたが、私の一言ですべてをきめようという覚悟がその言葉の裏に感じました。

次の一言はさすがに私も緊張しました。

「日曜日なら、つごうがつくけど」「次の」「うん」彼女は私の言葉をよく味わうかのように、しばらく黙り込んでいました。

「じゃ、次の日曜、時間は」「11時がいいね。車で迎えにいくよ。どこがいい」彼女は予め決めていたのか、即座に山の手の図書館前を言いました。