そして崩壊の序曲が私の耳に聴こえてきました

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彼女の私に対する打ち込みようが、すでに限度をこえて溢れ出そうとしているのを私は知りました。

彼女の一途すぎる性格は、これ以上突き進めばどうなるかを私に告げていました。まちがいなくどちらもの家族が崩壊するのは目に見えています。

最初に彼女をものにした時点で、私の気持ちはある程度満たされ、以後はあくまで安全地帯での逢瀬をたのしめればと考えていたのです。

ぬるま湯の中で私は既婚者同士の恋愛を思い描いていました。

ところが彼女は私をひとりじめする為には、危険地帯に踏み出すのも厭わない覚悟をきめていたのです。

私はとたんに弱気の虫にとりつかれました。

もう彼女とは会わないでおこうとさえ思いました。

が、彼女とすごしたひとときが、そのとき私のなかで炎をあげて燃え盛りました。

あの喜びをふたたび享楽できたらという欲望が私の中であたまをもたげたのです。

彼女がみせた、女の情念のすべてをさらけだした姿もまるでこういうときのために私のまぶたに焼き付けておいたかのようでした。

私は、いけないとおもいながらも、スマホ画面に彼女のアドレスをとりだしているのでした。

いつもと同じ水曜日の朝、図書館の前で私は彼女を車にのせました。

彼女は私から呼び出されたことに至極ご満悦でした。こんな時の彼女は本当にかわいらしく私の目に映りました。

「このままどこか遠くへ、いってしまいたいわ」いつもの直観で彼女は、私の胸のうちをみぬいていたのでした。

その夜、会社から帰宅した私は、何か家の空気が変なことに気づきました。

いつもなら起きているはずの妻の姿がキッチンにありません。

テーブルにも私の食事は用意されていませんでした。

さらに二人の子供たちもどこにもみあたらなかったのです。

家の中は空っぽでした。

私は妻のスマホに電話をいれました。

いくら呼び出しても、妻は出ませんでした。